自作CNCにおけるバックラッシュについて考える

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バックラッシュ(バックラッシ)とは?

バックラッシュ(Backlash)は歯車などの機械要素の嚙み合わせの遊び(隙間)を指します。

平歯車で回転を伝える場合、同じ方向に回り続けているときは影響はありません。
しかし、回転方向が切り替わるときにこのバックラッシュ分空回りすることになります。
動画は分かりやすいように遊びを極端に大きくした例です。

バックラッシュが無いとキッツキツでそもそも動かなかったりするので、機械要素の円滑な動作に必要な遊びと言えると思っています。
しかしバックラッシュが大きすぎると動作精度が落ちるので、円滑に動く範囲内でできるだけ小さくする必要があります。

自作CNCにおけるバックラッシュ

①組み立て精度に依るバックラッシュ

メーカーの部品情報なんかは組み立てが完璧であることを前提として書かれているものが多いですが、自作CNCの場合はここも非常に重要だと思っています。
部品の精度、性能ではなく組み立ての精度によって生じるバックラッシュ。
ネジが緩んでいる、送りねじの固定が甘い場合は送りねじそのものが動いてしまい非常に大きなバックラッシュとなります。

②送りねじのバックラッシュ

送りねじとネジの切られているブロック(ナットブロック)の間のバックラッシュ。
送りねじには三角ねじ、台形ねじ、ボールねじなど様々な種類があり、それぞれバックラッシュが少ない、強度が強いなど特徴があります。一般的によく見る説明としては下記のような比較になっています。
※各種類の中でもさらに種類があるので詳細は各メーカーサイトを参照してください。

スクロールできます
三角ねじ台形ねじ角ねじボールねじ
バックラッシュ普通少ない大きいとても少ない
強度普通強いとても強い普通
コスト普通安い普通高い
摩擦強い弱い弱いとても弱い
送りねじの比較

自作CNCにはコストと性能のバランスの良い台形ネジか、コストを度外視して性能に特化してボールねじを選ぶ方が多い印象です。
自分は台形ネジを使っていますが、理由は

台形ネジでバックラッシュを減らすノウハウがある
ボールねじを使う場合蛇腹などカバーが必要
ボールねじの良い話は予圧ありの場合の話

台形ネジはナットブロックを二つ使用し、その間にテンションをかけることでバックラッシュを無くすという先人の知恵(ダブルナット)があります。下記ミスミの商品ページの詳細情報なんかに詳しく書いてあります。

自作CNCでもこういったバックラッシュレスタイプの部品を使ったり、ナットブロックを二つ使うことで十分な精度を出すことができます。

もう一つのボールねじについて、ボールねじはバックラッシュがない!という極端な情報をよく目にしますが
実際は無与圧のものには軸方向にすきまがあります。
与圧タイプのものはメーカーカタログで隙間が0mm以下と書かれているので本当にバックラッシュゼロと言えるでしょう

1000mm送りねじを用意しようとした場合、台形ネジなら1万円、与圧なしのボールねじなら2万円、与圧ありのボールねじなら10万くらいの差があります。与圧ありと明記されているものが国内メーカーのものしか見つからないのでちょっと高めになっているかもしれませんが、バックラッシュゼロのものはこのくらい高くなります。

通販で買えるボールねじは与圧について書いてないものが非常に多く、お値段的には与圧なしと思われるものが多いです。ボールねじで自作CNCを作る場合は与圧のありなしに注意が必要です。あと防塵カバー。

③カップリング

モーターと送りねじを繋ぐカップリングにもバックラッシュがあると言われています。
良く見る比較としては以下のように書かれています。

スクロールできます
スリットタイプディスクタイプジョータイプ
許容トルク低い高い高い
許容偏差低い低い普通
バックラッシュなし?なしあり
コスト安い高い普通
カップリングの比較

安いスリットタイプは部品が分かれていないのでバックラッシュはなしとされています。が、伸び縮みがあるのとねじり遅れがありそうなので用語が違うだけで実質バックラッシュに相当するガタがある気がします。
ジョータイプは複数部品で構成されているのでバックラッシュがあるとされています。

正直スリットタイプとジョータイプを使っていてもバックラッシュは感じません。
メーカーカタログにも具体的にどのくらいという数値も見つかりません。理屈上バックラッシュはある程度の話なのかもしれません。ボールねじに比べると価格差も少ないので好みで選んでいいと思います。
私はスリットタイプを使っていましたが、モーターを付け替えるときにちょっと斜めになった瞬間割れたのでそれ以後ジョータイプを使っています。

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